今月の一言
2022年8月のひとこと
もっとも、実際に10代の子を持つ親になってみると、思春期というのは子どもと同じくらい、親にとっても難しい時期です。ちょっと前まで子どもが興味を持ちそうなことは何でも知っていた気がするのに、音楽にしても映画にしても、子どもがしゃべっている内容がわからなくなってきます。勉強にしても、小学校の漢字や算数の宿題とは違い、中・高校生の勉強を全教科理解できる親はむしろ少ないでしょう。子どもたちの成長をできるだけ助けてあげたいというのはいつも変わらぬ親の気持ちでしょうが、なにをしてあげられるのかつかみにくいのが、16歳の、親と子の関係である気がします。
(引用に際して、原文では漢数字であったものを算用数字に改めています。)
「16歳 親と子のあいだには」平田オリザ編著 岩波ジュニア新書 2007年6月
野口聡一著「茅ヶ崎から宇宙を目指した16歳」より
親としてこの年代の子供たちにしてあげられることを考えるのは確かに難しいことで、何かをしてあげたとしても、結局は子どもにとってその何かは「余計なこと」になってしまうことが多いような気がします。私も子供にしてあげられることは何なのかをあれこれ考えたことがありましたが、今は「何もしないこと」、もしくは「何もしないという覚悟を持つこと」が大切なことなのではないかと思っています。もちろん、これは子どもと全く関わらないということではありませんので、親として「これだけは譲れない」ということを子どもには伝え続けることは必要です。つかず離れず、親の存在だけは感じてもらえるような距離感を保つことができれば、これ以上のかかわり方はないように思います。(言うは易し、行うは難しですが。)
親と子の関係性で悩んでいる方も多いと思いますので、宇宙飛行士の野口さんの言葉を紹介させていただきました。誰から見ても「理想的な親」と思える野口さんでさえも、子育てに関しては我々と同じような悩みを抱えていたということを知るだけでも、ホッとするのではないでしょうか。