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今月の一言

2022年7月のひとこと

(44)人は精神が豊かになるにつれて、自分の周りに独創的な人間がより多くいることに気がつく。しかし、凡庸な人というのは人々のあいだに差異があることに気づかない。(断章七)

人は変わるのか変わらないのかという問題はさておいて、精神が豊かになる人とそうでない人はどこがどう違うのかといえば、それは多様性への覚醒ということになるでしょう。多様性の尊重が叫ばれる今日ですが、人は多様であるということに気づくには、まず自分が精神的に豊かになるということが必要なのです。

※下線は引用者による

「『パンセ』で極める人間学」 鹿島茂
NHK出版新書 2022年6月

本校で使用している生徒用の「日直日誌」は、「その日の感想」を記載するスペースが非常に大きく、既製品を使用していた時と比べてそこに記載される文章の量も多くなりました。また、記載される内容も多岐にわたっており、読む側(教員)にとってとても興味深いものとなっています。私も、不定期ではありますが日直日誌を読ませてもらっており、今ではそれが一つの楽しみとなっています。そして、最近のことですが、生徒たちのコメントには学年によって次のような特徴があるということに気づきました。

自分と違う(考えを持ち、行動をとる)人がいた場合、その人に対するコメントは学年を追うごとに(学年が上がるにつれて)『肯定的』なものが多くなる。

「人は多様であるということに気づくには、まず自分が精神的に豊かになるということが必要なのです」という下線部の記述にあるように、多様性に対して寛容になるためには精神的な成長が必要不可欠といえます。その点から言えば、「上級生になるにつれて自分と違うことに対して肯定的な意見が多くなる」傾向のある本校の生徒たちは、年齢とともに精神的にも着実に成長している、と見ることができると思います。

今後も生徒諸君にはこの本郷でより多くの人と接し、色々な価値観に触れてもらいたいと思います。それが生徒たちの精神的な成長に、ひいては多様性への覚醒に必ずや繋がるはずです。