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今月の一言

2022年12月のひとこと

 哲学者の鷲田清一さんは、民俗学者の宮本常一が一人の石垣積み工の語りとして遺してくれた次のような言葉を、ご自身の著書の中で引用しています。

しかし石垣つみは仕事をやっているとやはりいい仕事がしたくなる。二度とくずれないような……。そしてそのことだけ考える。つきあげてしまえばそれきりその土地とも縁はきれる。が、いい仕事をしておくとたのしい。あとから来たものが他の家の田の石垣をつくとき、やっぱり粗末なことはできないものである。まえに仕事に来たものがザツな仕事をしておくと、こちらもついザツな仕事をする。また親方どりの請負仕事なら経費の関係で手をぬくこともあるが、そんな工事をすると大雨の降ったときはくずれはせぬかと夜もねむれぬことがある、やっぱりいい仕事をしておくのがいい。おれのやった仕事が少々の水でくずれるものかという自信が、雨の降るときにはわいてくるものだ。結局いい仕事をしておけば、それは自分ばかりでなく、あとから来るものもその気持ちをうけついでくれるものだ。

 

「しんがりの思想」―反リーダーシップ論― 
鷲田清一著 角川新書  2015年4月

 今年度は久しぶり(3年ぶり)に人数制限のない学園祭を開催することができました。名物の本郷市(食品を扱う屋台が集まったもの)が実質中止となるなど、コロナ禍前に比べ不自由さはもちろんありましたが、それがかえって生徒たちのやる気に繋がったように思います。「できないことを嘆くのではなく、できることを探してそれに全力で取り組む」、そんな生徒諸君の前向きで強い気持ちを大いに感じることができた学園祭でした。

 上記の石工の話を読み、本校の生徒と重なる部分が多かったのでここで紹介させていただきました。今年度の文化祭実行委員や生徒会の生徒諸君が「いい仕事」をしてくれましたので、「あとから来るもの」もその気持ちを確実に受け継いでくれると確信しています。