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学校生活

令和6年度順天堂大学との高大連携プログラムを実施しました

昨年度順天堂大学と締結した高大連携事業として、今年度もプログラムが実施されました。今年は、本校でワークショップ形式のプログラムを行ったのち、順天堂大学での講演および大学施設の見学・体験という2日に分けてプログラムが行われました。

本校で開催された第1日目のプログラムでは、同大学の小倉加奈子先生と發知詩織先生が来校されました。お二人は、医療の本質を体験し、医学や医療が専門知識だけでなく日常生活の中にヒントがあることを学ぶ「MEdit医学授業 病理医の仕事とは?病気の診断リアル バナナの病理診断ワーク」というワークショップを実施されました。1日前、3日前、5日前に購入したバナナが劣化する中で、分類する基準を設けるゲームが行われました。医療現場では、意識状態から疾患の確定診断まで多くの診断基準が使われ、微妙な事例も分類可能な基準が重要です。生徒たちは、数値など客観的指標を用いることの重要性を学び、診断のリアルを体験しました。

続いて、生徒たちは順天堂大学お茶の水キャンパスを訪れ、さらに貴重な経験を積みました。まず、冒頭このプログラムを立案・準備してくださった小川尊資先生による「今の勉強は無駄にならない」という挨拶の後、内藤俊夫先生が登壇されました。

地下鉄サリン事件の暗闇、東日本大震災の荒廃、そしてコロナパンデミックの混乱、などを医師として経験した内藤先生だからこそ語ることができる真実がありました。「突然訪れる災厄の中で、君はどうあるべきか?答えはただ一つ、パニックの中でこそ役に立つ人間たれ」。日々の覚悟、絶え間ない研鑽、それが内藤先生の訴える道でした。続いて先生は、日常の診療での患者との一つひとつの対話も、今の学校の勉強が、その土台を形づくるのだと語られました。その言葉は、冒頭の小川先生のお言葉と重なり、生徒たちの心の奥深くに響きました。

次に、同大学シミュレーションセンターにて、介護に携わる人々だけでなく、彼らを教育する人手も不足している現状が語られ、VRゴーグルを用いた介護現場の医療実技体験が行われました。VRの世界の中で、浴槽に沈んでいくご老人の姿が映し出されたその光景に、ゴーグルを装着した生徒たちが思わず手を差し伸べました。彼らの心の中で何かが揺れ動き、行動を突き動かした瞬間でした。

また、日本医学歴史館では、長い医学の発展が語られました。大河のような、先人たちの努力と知恵の積み重ねの歴史の中で、未来を担う責任を重く感じたのではないでしょうか。

プログラムの最後には、本校OB講演と懇親会が行われました。本校OBでもある福島理文先生が、スポーツドクターとして、Jリーグやオリンピックのサッカーチームに帯同された経験をお話されました。折しもパリオリンピック帯同から帰国されたばかりでしたが、本校生徒のために時間を割いて登壇してくださいました。本校理念「強健、厳正、勤勉」を第1線で活躍する医師の立場から解釈し、本郷の自由な空気のなかで精いっぱい頑張ってほしいとやさしく、そして熱く語りかけてくださいました。

懇親会では、本校卒の現役学生や、医師も参加し、学生時代の思い出や受験勉強、部活動のことなどが話題になりました。同じ本郷での記憶を共有する者同士、一瞬で緊張が解け、朗らかな時間となりました。

学内施設を巡る途中、生徒たちの視線を引き寄せた掲示物がありました。それは、ウクライナの病院の写真でした。そこに写る光景は、直視することすら困難であり、どんな言葉を尽くしても到底表現しきれない惨状が広がっていました。つい先ほど聴講したばかりの内藤先生の「役に立つ人間たれ」という言葉が、生徒たちの心に重くのしかかりました。己の存在意義とは、役に立つ人間とは一体何か。彼らは、その写真を前にして、自らの選んだ道の厳しさ、医療現場に身を置く覚悟を無言のうちに問われたはずです。

生徒たちにとって、医師を志し、医学部入試突破という重い扉を開けることは非常に重い決断です。彼らは、この2日間を通して、その扉の先にある極めて尊いものを垣間見ることができました。さらに、そのために計り知れない努力を超えて扉をこじ開ける確かな意義があることも納得できたのではないでしょうか。今後、この覚悟が彼らの中で醸成され、崇高な志となってほしいと願うばかりです。これらのプログラムが、仲間たちと入試に向かう気合を共有する一助となれば幸いです。

改めまして、順天堂大学高大連携関係各位に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

参加した生徒のコメント紹介

  • 現場の先生方の話を聞くだけでもとても有意義で今後に意味のあるもので、とても満足していたが、その中にバナナの診断ゲームのような楽しみつつ、実際の診断のような要素もあって、ますます自分の中に医者の診断というものを身近に感じられたので、5日の大学訪問もとても楽しみに、そして学べることを多くしようと思った。(R君)
  • 人を救うためには受験を突破するための学力を保持して,生涯学び続ける姿勢が必要なのだとわかった 一見、何にも結びつかないと思ってしまうことにもためになることを見つけようという姿勢をもっていきたいと思った。(M君)
  • 実際に、あれを人にするっていうのは少し怖い(シミュレーションセンターでの気管挿管実習)(M君)
  • 医者になるだけを目標にするのではなく、人のためにどれだけ力を尽くせる自分を作ることが出来るかが重要なことを改めて実感できた。また、リーダーとして色々な人々と渡り合えるよう知識をつけてく事が大切であることも学ぶことができた。(B君)
  • スポーツドクターが実際の現場でしている仕事を知ることができた。実際自分のスポーツに携わり続けたいと考えているためとても有意義であった。(M君)
  • 「医者になる覚悟」をしていた自分が浅はかであったと気付いた。今回参加したことで、医者になったその後、自分がどのように生きたいか、自分なりの答えが出せたと思う。(N君)